どうやら隣人は変みたいだ
私は今のマンションに引っ越してからかれこれ1年と3ヶ月ほど経つが、
隣人の顔を見たことがない。
顔を見たことがないので、こちらとしては
隣人について語るときは想像上の隣人像であるのだが。
そもそも、顔を合わせる機会は幾度となくあった。
しかし、いずれも失敗に終わった。
そもそも、引っ越しの挨拶に訪れた際、となりの家に隣人はいた。在室していた。しかし、出て来てくれたのは息子の1人のみ。
忙しい、とのことだった。
隣人とはマンションの共同廊下で繋がっているが、隣人の廊下の前は物で溢れている。子供用の自転車やサッカーボール、大量の傘など。
どうやら子だくさんのようだ。
マンションの壁はしっかりしているので子供の声は聞こえない。
いったい、何人家族なのだろうか。
先日、いつも通り、清々しい朝を迎えた私は
大学へ向かおうと玄関の扉を開けマンションの共同廊下へ踏み出すと、そこは血だらけだった。
絶句。
エレベーターから続く血痕は隣人の玄関の扉につながっていた。
明らかに鼻血ではない量の血。
昨晩、隣人は地球を征服しに来た未確認生物と大乱闘でも繰り広げて帰宅したのだろうか。
遮断機の降りた線路の中に取り残された老人でも助けようとしてのだろうか。
いずれにしろ、血は拭け。
怖いから。
後日、隣人はそのことを詫びに来たようだが、私はちょうど出かけていた。
また隣人を目にする機会を失ってしまった。